八丈太鼓はなみずきの奏子です。
ここしばらく、頭から離れない光景がありました。
太鼓を一打した瞬間、その音が水面に落ちた雫のように広がっていくイメージです。
小さな波紋が隣の誰かに届き、その人が返した音が、また別の誰かへ届く。
やがて、その波紋は大きな共鳴になります。
八丈太鼓を26年続けてきて、私が一番好きなのはこの瞬間です。
上手い下手ではありません。
たたいた音と返ってきた音の波長が、ぴたりと重なる瞬間。
その感覚を言葉にするなら、RESONANCE(共鳴)しかありません。
囃子は、人を寄せる太鼓だった
以前、このコラムで「八丈太鼓囃子」について書きました。
八丈太鼓が今のように舞台で演奏される以前、それは祭りの始まりを告げる音でした。
「始まるよ。」
「こっちへおいで。」
遠くにいる人へ向けて打たれる、人を寄せる太鼓。
つまり八丈太鼓は、もともとその場にいない人を呼び寄せるための音だったのです。
そう考えたとき、ふと思いました。
今、私たちが呼び寄せたい「遠くの人」は、どこにいるのだろう。
きっと、画面の向こうにもいます。
会場まで来られない人。
八丈島をまだ知らない人。
偶然、配信を開いた人。
そんな誰かに向かってたたく太鼓も、今の時代だからこその「人を寄せる太鼓」なのかもしれません。
音を、光の波紋へ
そんな思いから作ったのが SONIC RIPPLES です。
マイクで拾った太鼓の音に合わせて、画面上に光の波紋がリアルタイムで広がる、OBS用のビジュアルエフェクトです。
🔗 https://github.com/8jotaikohanamizuki/sonic-ripples
配信では、どうしても音圧が削られます。
身体に響く振動までは、そのまま届けることができません。
だったら、耳に届かない分を、目に届けよう。
打てば光が広がる。
強く打てば大きく。
細かく刻めば繊細に。
太鼓が生み出す振動を、光の波紋へ変えて届ける。
正直に言えば、趣味全開で作りました(笑)。
でも私にとっては、これも八丈太鼓の活動です。
画面の向こうにいる誰かへ、「始まるよ」と届ける。
私にとってSONIC RIPPLESは、そんな新しい人を寄せる太鼓です。
そして、一曲になりました
同じ思いのまま、一曲つくりました。
🎵 『RESONANCE / 響きは消えない』

放った音は、その場で消えたように見えて、本当は消えていません。
誰かの中に残り、
いつか別の音となって返ってくる。
26年間、八丈太鼓を続けてきて、それだけは確かなことだと思っています。
バチの形は、変わっていい
八丈太鼓には楽譜がありません。
決められた型を再現する芸能ではなく、その場の相手と呼吸を合わせながら生まれていく芸能です。
だから、表現の道具も時代に合わせて変わっていい。
木のバチも。
コードを書くためのキーボードも。
映像も。
音源も。
私にとっては、どれも同じ「バチ」です。
この音と想いを、どうすれば向こう側へ届けられるのか。
そのために選んだ道具でしかありません。
人を呼び、響きをつないでいく。
私は、その役割は今も変わらないのだと思っています。
「ここで音が鳴っているよ。」
「一緒にたたこう。」
その呼びかけ方が、少し変わっただけなのだと思います。
小さな波紋が、どこかの誰かへ届きますように。


