港区への現場からの提案
八丈太鼓はなみずき代表の奏子です。
この春、私は港区に二つの提案を「区民の声」として届けました。
一つは、オンライン決済導入時に課題となる特定商取引法上の住所公開問題。もう一つは、港区のキャッシュレス決済サービス「みなトクPAY」の活用範囲拡大についてです。
一見すると、太鼓や地域文化活動とは関係のない「経済」や「DX」の話に見えるかもしれません。
しかし、26年間地域活動を続けてきた中で、私はあることを実感してきました。
人と人とのつながりは、文化だけで生まれるものではない。
それを支える制度や経済の仕組みによって、大きく左右される。
ということです。
竹芝という街で考えていること
私たちが活動の拠点の一つとしている竹芝エリアは、「竹芝スマートシティ」として急速な進化を遂げています。
都市機能がデジタルによってアップデートされ、街は便利で効率的になっていく。
その変化を間近で見ながら、私たちが大切にしたいと思っているのは、
「この最先端の街に、どうやって人と人との温かいつながりを響かせるか」
という問いです。
港区への二つの提案も、根っこにあるのはこの問いです。
DXは「効率化」のためだけにあるのか
港区ではDX推進が進められています。
商店街向けのキャッシュレス決済サービス「みなトクPAY」も、その成果の一つです。
現金管理の負担を減らし、利用者の利便性を高める。
とても意義のある取り組みだと思います。
一方で、地域の現場ではどうでしょうか。
町会、文化団体、市民サークル、子ども向け活動団体など、多くの地域コミュニティは今も現金で会費や参加費を集め、会計処理を行っています。
DXの恩恵は商店街には届いていても、地域コミュニティにはまだ十分届いていないように感じます。
「参加する」までの小さな壁
私たちは6月、9月、12月、2月、「たたいてみよう八丈太鼓」という体験ワークショップを開催しています。
子ども、高齢者、会社員、外国人。
さまざまな人が同じ太鼓を囲み、同じリズムを刻みます。
その時間の中で、人は自分とは異なる背景を持つ人の存在を自然に感じます。
そして、
「また参加したい」
という気持ちが生まれます。
こうした場を支えているのは、人の思いだけではありません。
材料費、保険料、備品代、会場運営費。
活動を続けるためには、実費が必要です。
そのたびに現金を集め、釣り銭を用意し、記録を残す。
本来であれば、人と人が出会い、地域とつながることに使いたい時間や労力が、事務作業に費やされてしまいます。
私は、この違いは単なる利便性の問題ではないと思っています。
少額であっても、お金をやりとりするという行為は、地域活動を支える意思表示でもあるからです。
経済行動が地域とのつながりを生む
もし、商店街で利用している「みなトクPAY」が、文化活動や地域イベント、子ども向け体験活動なども支える仕組みになったらどうでしょうか。
日常の消費行動が、自然と地域を支える。
そして、
「自分も地域の一員なんだ」
という感覚が育まれていく。
私は、そこに都市の新しいコミュニティの姿を見ることができるのではないかと思っています。
地域活動を支える制度がまだ足りない
一方で、現場には制度的な課題もあります。
オンライン決済サービスを導入する際、特定商取引法に基づく住所表示が求められる場合があります。
任意団体には事務所がないことも多く、結果として代表者個人の住所を公開せざるを得ないケースがあります。
DXを進めたい。
しかし、安全面を考えると導入できない。
そんな矛盾が、地域活動の現場では実際に起きています。
みなトクPAYを「地域インフラ」へ
私は、「みなトクPAY」を単なる決済サービスではなく、
商店街、文化芸術団体、地域コミュニティ、区民をつなぐ地域インフラ
として発展させる可能性があると思っています。
商店街振興と地域コミュニティ支援を同じデジタル基盤の上で考えることができれば、港区ならではの新しい地域循環のモデルが生まれるかもしれません。
未完成だからこそ、対話できる
私たちは決して完璧ではありません。
地域活動の中で失敗もしますし、試行錯誤の連続です。
それでも、対話によって社会は少しずつ良くなっていくと信じています。
だからこそ、今回の提案を港区に届けました。
行政、商店街、文化団体、地域メディア、そして区民一人ひとり。
これまで別々に語られてきた課題は、実は一つの地域の課題なのかもしれません。
港区のDXが、単なる効率化ではなく、人と人とのつながりを支える仕組みとして発展していく。
そして、自分の日常の行動が地域を支えていることを実感できるまちになる。
それが、私の願いです。
参考資料
- 港区への「区民の声」提案(受付番号 KZ00540198):みなトクPAYの活用範囲拡大について
- 港区への「区民の声」提案(受付番号 KZ00526497):地域活動団体のDX化に伴う住所公開リスクと制度支援について


