「技術」よりも大切なこと「誰もが参加できる場所」

私たち「八丈太鼓はなみずき」が主催する『こども八丈太鼓』。 太鼓のバチを握る子どもたちの表情は真剣そのものですが、私たちがこの活動で目指しているのは、実は「上手に太鼓を叩けるようになること」だけではありません。

私たちが本当に作りたいもの。 それは、八丈太鼓という活動を通じて、地域の中に「誰もが参加・体験できるコミュニティ」を育むことです。

一般的な習い事には、月謝や道具代といった費用がかかるのが普通です。しかし私たちは、八丈太鼓という郷土芸能を、単なる技術指導の場としてだけでなく、もっと広い意味での「コミュニティの財産」だと捉えています。

今日は、私たちが大切にしている「活動の根っこ」にある想いについて、少しお話しさせてください。

1. 経済的な理由で、文化に触れる機会を諦めさせたくない

東京都港区という都心で活動していると、豊かな文化資本を感じる一方で、見えにくい「格差」を感じる瞬間もあります。

「太鼓を叩いてみたい」 その純粋な好奇心を持った子どもが、家庭の経済的な事情によって、その手を引っ込めてしまうこと。それは、その子にとっても、これから一緒に太鼓を楽しめたはずの私たちにとっても、とても残念なことです。

才能や意欲があるすべての子どもたちに、太鼓のバチを握るチャンスを届けたい。 経済的な壁を取り払い、誰もが平等に「響き」を楽しめる場を提供することは、私たちの使命の一つです。文化は一部の人だけの贅沢品ではなく、みんなで分かち合うものだからです。

2. 「二人打ち」だからこそ育つ、心の対話

八丈太鼓の最大の特徴は、一つの太鼓を二人で向かい合って打つ「二人打ち」です。

一人がリズムを刻み(下拍子)、もう一人がその上で自由に太鼓を打ち鳴らす(上拍子)。そこには楽譜には書き表せない、その瞬間だけの「対話」が生まれます。 相手の呼吸を感じ、目を見合わせ、音で会話をする。

この体験は、現代社会においてとても貴重なものです。 ただ太鼓が上手くなることだけが目的ではありません。年齢や立場、そして経済的な背景が違っても、太鼓の前では「ひとりとひとり」として対等に向き合う。その経験が、子どもたちの「他者を尊重する心」と「自分を表現する勇気」を育むと信じています。

3. 地域に開かれたインクルーシブな取り組み「たたいてみよう八丈太鼓」

その理念を形にしたのが、定期的に開催している体験イベント『たたいてみよう八丈太鼓』です。

このイベントは、年齢や障がいの有無、バックグラウンドに関わらず誰でも参加できる「地域のインクルーシブな取り組み」として位置づけています。

初めてバチを持つ子も、見守る保護者の方も、地域のお年寄りも。太鼓を囲めば、そこには自然と「多世代の交流」が生まれ、立場を超えたひとつの輪ができます。

4.「ひとりとひとり」が響き合う地域へ

八丈太鼓の特徴である「二人打ち」は、向かい合う相手を受け入れることから始まります。 それはまさに、私たちが目指す地域社会の姿そのものです。

『こども八丈太鼓』や『たたいてみよう八丈太鼓』を通じて育った子どもたちが、やがて太鼓の技術だけでなく、「自分とは違う誰か」と共に響き合う喜びを知っている大人になってくれたら。 そう願って、私たちは今日も活動を続けています。

太鼓の音に誘われて、ぜひ一度この「コミュニティ」を覗きに来てください。

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