太鼓のフチと面を叩く際、誰もが一度は「どうすれば狙った通りの音色が出せるのだろう?」と考えます。実は、その答えの多くは、バチを握る「強さ」という、非常に基本的なところに隠されています。太鼓をより深く、表情豊かに叩くために、この「握りと倍音の秘密」に迫ってみましょう。
1.バチの握りが音色(倍音)を変える仕組み
太鼓の音の「深み」や「響き」を決めるのは、同時に鳴る様々な周波数の「倍音」です。バチの握りの強さが、この倍音を「生かす」か「抑える」かのスイッチになります。
- 握りが強い場合(固定・制振)
- 物理的影響: 手の筋肉や関節がダンパーとなり、バチと太鼓の振動エネルギーを吸収し、早く止めます。
- 音色の変化: 倍音の余韻がカットされ、ソリッドで「芯」が強調された硬い音になります。
- 握りが緩い場合(解放・リバウンド活用)
- 物理的影響: バチが自由に動き、振動エネルギーが手で吸収されず、太鼓の皮に最大限の響きを与えます。
- 音色の変化: 倍音が豊かに残り、伸びがあり「響き」が豊かな丸い音になります。
2.「握り」は表現力を広げるツール
バチの握りの強さは、単なる持ち方ではなく、「音色のパレットを広げるための重要な技術」です。
自分の狙った音色(必要な倍音、必要な芯)を見極め、握りの強弱を瞬時に切り替えることが、太鼓の深い表現へと繋がります。
3.【重要】長く太鼓を続けるために
表現のために強い握りを使うことはありますが、日常的な練習では「緩い握り」も取り入れて振動を逃がすことが、手首や肘を守る上で非常に大切です。八丈太鼓と長く、深く付き合っていくために「自分の身体を守る握り方」と「表現力を高める握り方」の両方を意識して、練習に取り組んでみてください。


